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内藤景代 記 |
2002年8月17日(土) 唐十郎作の『吸血姫』を、花園神社の紫テントで見る。 ◎「固形意識」は、笑いながらゆがみ、ねじれ、 ◎「流動意識」にとけていき、すべては、ひとつになっていく。 ◎異次元がたちのぼる共同幻想の世界 |
昨夜は、NAYヨガスク−ル近くの 花園(はなぞの)神社の境内(けいだい)に特設された紫テントの中で、 お芝居―『吸血姫』を見ました。 ●↑左の2つの赤い矢印の部分が、新宿梁山泊(りょうざんぱく) 紫テント ――唐十郎作の『吸血姫』を、花園神社の紫テントで見る。 「固形意識」は、笑いながらゆがみ、ねじれ、 「流動意識」にとけていき、すべては、ひとつになっていく。 異次元がたちのぼる共同幻想の(しんじゅくりょうざんぱく)の移動劇場 ――紫テントです。 右の赤いものは、花園神社の鳥居(とりい)です。 ●暑いのでは…と思っていましたが、 涼しい夕方でしたし、涼(りょう)をとる工夫がありました。 右面は↑よしず(黄色の矢印)にして、 風通しをよくし、天井や壁には扇風機がまわり、 入り口では、団扇(うちわ)をくばり、 そばでは出演役者が扮装のままで、かき氷を売っていました。 ●座布団(ざぶとん)をしいた桟敷(さじき)にすわると、 ビニ−ルが配られ「水がとんできますので、お使いください」と、 いつもの口上(こうじょう)です。 いわゆるアングラ(アンダ−グランド)系といわれる新宿梁山泊は、 水を使うのが好きなのです。 そして客席にも水しぶきや、 注射器の液体などいろいろとふりまくのです。 それがイヤなひとは、桟敷はパスします。 ●新宿梁山泊(6月16日のエッセイ)は、 1960年代の唐十郎(からじゅうろう)の 状況劇場(じょうきょうげきじょう=現・唐座 からざ)や 蜷川幸雄(にながわゆきお)のもとにいた 金守珍(きむすじん=金盾進)が中心になって 「ロマンの復権」を旗印に、1987年にできた劇団です。 ●わたしは、新宿梁山泊の旗揚げ公演は見逃しましたが、 翌年1988年の3回目の 「夜に群がる星の騎馬隊」 -昭和の終わりの暗い日曜日- (渡辺えりこ作) から、ずっと、ほとんど全部の芝居を見ています。 初期の役者さん達は、今は退団し、 その頃、新人だった女優さんが主演して、 「代替わり(だいがわり)」を感じます。 ……が、むかしの女優さんたちが子連れで見物に来ていたり、 今はテレビの悪役などで活躍している俳優さんが 見に来て談笑しているのをみると、 番外の芝居のようで懐かしく感じます。 ●さて、昨夜のお芝居は ――ご本人の唐十郎さんも、昨夜、見物にいらしてましたが ――唐十郎作の『吸血姫』です。 ●このお芝居は、 墓場のそばのマンションの地下(アンダ−グランド!)にある 新宿梁山泊の 「芝居砦・満天星(しばいとりで・まんてんぼし)」で見ました。 (その時、となりの観客が唐十郎さんでした…) ●――2度目の観劇ですが、 はじめて、新宿の花園神社で新宿梁山泊が紫テントをはって公演する …というので、どんな演出になるのか、楽しみに出かけました。 夏休みなので、NAYヨガスク−ルの植物の水やりにもよりました。 ●物語のヒロインは、 「海之ほおずき」と名のる、 人力車にのった白衣の看護婦…実は、〜 ●赤いほおずきそのもや、 「夕焼け色した、ほおづき」が、 あるメタファ−(暗喩 あんゆ 『聖なるチカラと形・ヤントラ』 42n)として、 せりふでくりかえしでてきます。 ※↑よしず囲いに、ほおづきをつるして、涼をよんでいます。 ●翼をつけた白衣(びゃくえ)の天使隊の看護婦たち …愛染(あいぜん)かつら …♪花も嵐も踏みこえて♪…高石かつえ …浅草の国際劇場…満州国の建設…王子と王女 …東洋のマタハリとよばれたスパイ・男装の麗人・川島芳子(よしこ) …その義父になった満州浪人の川島浪速(なにわ) …関東大震災の惨事 …上野の森(上野公園) …三ノ輪(都電の荒川線の早稲田からの終点) …風呂屋(銭湯 せんとう) …売血(ばいけつ)…献血 …近親相姦(きんしんそうかん)…親殺し …リストカット …血…海…ほおづき… ――そして、青春。愛。 ●イメ−ジの喚起力(かんきりょく)のある言葉が、 早口のせりふで飛びかい、 日常的な場所から、目くるめく、 異次元がたちのぼってくる ……非日常の異空間へ、 こころはとんでいく…… 悪夢? 白昼夢? 脳味噌がとける…? ●物語をもった別々のイメ−ジのひとつひとつが、 ねじれゆがみ、いつのまにか、 ひとつの物語に溶けていく……。 笑いながら、楽しみながら… 分析的で論理的な「固形意識」は、 笑いながらゆがみ、ねじれ、 「流動意識」にとけていき、 すべては、ひとつになっていく……… (『聖なるチカラと形・ヤントラ』 45n 「なぜ、めまいと陶酔を生む形があるのか?」) ●芝居という虚構(きょこう=うそ)の世界から、 人の世の リアリティ(真実)が透けてみえる…ひととき…… ●楽しかったですが、 休憩が2回で、10:30に終了だと、 その後の飲食がすぐに「オ−ダ−ストップ」になり、 観客としては、つらいです。 宙乗りや座席の真ん中を通る花道での芝居など、 前回よりもたっぷりとサ−ビスが入っているのはわかるのですが ……観客の体力がもつかどうか? ●1960年代の戯曲は、今から30年以上むかしが中心です。 言葉や歌謡曲に「共同幻想(きょうどうげんそう)」 をもたない世代にとっては、いかがなものか? とも思われますので、 パンフレットに「1行用語集」などあると、 休憩時間などに読めて、もっと面白がれるのでは? ……と愚考しました。 ●今夜と明日の夜(7:00開演)まで、 花園神社で公演し、当日券はあるそうです。 その後、地方公演もあります。 そこで、演出がまた変化するので、面白いです。 失われた別世界で遊びたい方は、どうぞ。 |
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