BIG ME club | 内藤景代が毎日更新する 日誌風エッセイ 最新情報 |
内藤景代記 |
2002年8月30日(金)
平安時代のイラスト版『源氏物語』である『源氏物語絵巻』にかかれた、
|
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
※追記:下記に、その後、出会って撮影した夕顔や夜顔の写真のリンク・ページを3つ掲載しています。 ↓↓↓↓ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
紫式部(むらさきしきぶ)の『源氏物語』に出てくる 「夕顔(ゆうがお)の花」と、今、いわれている花と、 ドラマチックな出会いがありました。 …が、その前に、『源氏物語』の「夕顔」の巻(まき)を、おさらいしましょう。 ●下の絵↓は、『源氏物語』の名場面を絵巻き物にした 『源氏物語絵巻(げんじものがたりえまき』 ――平安時代のイラスト版『源氏物語』――の「夕顔」の巻です。 ●紫式部の『源氏物語』の「夕顔」の、お話です。↓ ●平安時代の貴族の光源氏(ひかるげんじ)が、 病気の乳母(うば)を見舞ったとき、隣の家の垣根に ――宮中(きゅうちゅう)では見たことのない ――「白い花」が蔓(つる)をからませて咲いていました。 ↑上の青い矢印です。 ●庶民の生活を知らない光源氏にとっては、 珍しい花なので、「花の名前」を、 家来(けらい)に聞かせにいきました。 すると… ●扇(おうぎ)の上に、その「白い花」をのせ、 和歌がそえてありました。 隣の家の主(あるじ)の女性からの、光源氏への答でした。 Q & A ●「花の名前」は知っているが、 本物の「夕顔」を見たことのない、 今のわたし達の状況と、光源氏は、逆です。 垣根に咲いた見たことのない「白い花」に心をひかれても、 「花の名前」を、彼は、知りません。 ●そして、光源氏の問(Q)への、 白い花にそえられていた、女性からの答(A)は…… 心あてに それかとぞみる 白露(しらつゆ)の 光そえたる 夕顔の花 歌の答で「白い花」は「夕顔」とわかり、 その女性も「夕顔」とよばれるようになります。 そして、お互いに身分を隠して、 二人は結ばれ、物語が展開するわけです… ●さて、上の↑『源氏物語絵巻』の「夕顔」のペ−ジをみると、 十二単(じゅうにひとえ)の女性と扇をもった男性がいる右下に、 垣根にさいている「5弁の白い小さな花」が3輪かいてあります。 青い矢印の所に1輪、右斜め上にも2輪。 ● 上が、「夕顔の花」の紋章(もんしょう)です。 (『日本「家紋由来」総覧』 新人物往来社) 上の↑『源氏物語絵巻』の素朴なタッチに雰囲気が似ています。 こういう「家紋(かもん)」をもつ家系もあるのですね。 ●今回、夕顔の本物が見つからないので、 紋所(もんどころ)を調べたところ、「夕顔の花の家紋」は、5つありました。 上のほかに、「月と夕顔を組み合わせたもの」(右下↓)や、 「夕顔の蔓(つる)と月をあわせたもの」(左下↓)などがありました。 ●『源氏物語』の「夕顔」を「共通認識」にしたひと達だけにわかればいい …という「風流(ふうりゅう)」というか 「風雅(ふうが)」な紋所(もんどころ)です。 どれも「夕顔の花の家紋」は、繊細なので、 戦場を駆けまわる武士の旗印(はたじるし)には、むかないのではなかろうか …と感じました。優雅だけれど、勝負には弱い…? ●8月6日のエッセイにかいたように、 むかしから、『源氏物語』の登場人物の女性たちの中で、 男性に一番人気のある女性が ――垣根に蔓をからませて、夜、ひっそりと開く「白い花」の ――「夕顔」の君(きみ)なのです。 ●ところが、時代が変わるにつれて、 感性(センス)も変わり、 今、『源氏物語』の「夕顔」といって、 売られている花は、イメ−ジがちがうのです。 夜に開花する「白い花」で、蔓性ですが、 上記の花のように5弁にわかれておらず、 朝顔のように、丸く円錐形になっています。 そして、大きなちがいは、その大きさです。 大輪(だいりん)の白い朝顔のように、15〜20cmになります。 『源氏物語』の「夕顔」は、「小さな白い花」で 5〜10cmです。 ●「小さな花(プティ・フル−ル)♪」 というフランスの歌が、むかし、はやりましたが、 かつての「感性(センス)」は、 「小さく、白い花」だからこそ……可愛い ………という…男性の好みだったようです…… ●そして、大輪の花のような華やかな、 選りすぐりの美女たちにかこまれている、 光源氏にとっては、垣根に巻きつき ひっそりと夜に小さな花を咲かせる白い花に似た 「夕顔」の君は、 見たことのない新鮮な魅力だったのではないでしょうか…? ●――要するに、光源氏は、 食べる苦労を知らない貴族なので、 ウリと同じ食用の実をとるために育てている(らしい) 夕顔の花は、見たこともなく、新鮮だったわけでしょう。 一方、夕顔が漬け物やかんぴょう(干瓢)などの 食用として、栽培される …と知っている、わたし達・庶民(しょみん)は、 王朝絵巻(おうちょうえまき)の 人気ナンバ−ワンの美女のイメ−ジは、 「大輪の立派な、さすが! という白い花」だろう ……と感じるのが、「庶民感情」のようです。 ●――その「ねじれ現象」は、むかしからあるようです。 むかしは、縁日(えんにち)などの夜店(よみせ)で、 「夕顔!」といって、 夜に咲く「大輪の白い花」を売っていたそうです。 そして、今は、園芸店でも、 その夜に咲く「大輪の白い花」を 「夕顔」と名づけて売っているようです。 ……ガ−デニング・ブ−ムで、 【『源氏物語』の「夕顔」は、この「大輪の白い花」です】と、 定着していくのでしょうか……? ネットで検索すると、そうなりつつあるようです…… ●その「大輪の白い花」は、 現代人も納得するような綺麗な花です。 光源氏の時代背景とは、現代はちがうので、 こういう「大輪の白い花」を彼は好んだのだ ……と感じると、 「文学鑑賞」には、問題はあるでしょうが……… ●――さて、その【『源氏物語』の「夕顔」は、 この「大輪の白い花」】と、多くのひとに思われている花は、 「夜顔(よるがお)」といいます。 夜顔は、別名を「夕顔、ム−ン・フラワ−、ヤカイソウ」と呼ばれる、 ヒルガオ科の芳香のある丈夫な花です。 夜顔が、天に向かってたくさん開いている、 幻想的な景色に、 山の祭りで出会いました。 とても綺麗でした。その写真は、また明日。 |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
※後記;夕顔(ユウガオ)の白い花は、約1年後に出会いました。こちらへ。【2003年9月8日(月) 今年はダメとあきらめていた、ユウガオ(夕顔)の白い花が開花した姿と出会った、夕暮れ。薄日(うすび)をあびて、ユウガオ(夕顔)の白い花びらに「薄緑色の葉脈のようなすじ」が透けてみえる】http://www.bigme.jp/000-000-03-09/03-09-08/03-09-08.htm※後記:夕顔(ユウガオ)とよばれて花やさんで売っている大きな白い花は、夜顔(ヨルガオ)。こちらを源氏物語の夕顔(ユウガオ)と思っているかたは、多い。そのお話との写真はこちらへ。【 2002年8月31日(土) 今、「夕顔(ユウガオ)」と呼ばれている…園芸種の大きな白い花、「夜顔(ヨルガオ)」との出会い】http://www.bigme.jp/00-0-01-2-essay-news-2002-08/2002-08-31/2002-08-31.htm
http://www.bigme.jp/000-000-03-09/03-09-06/03-09-06.htm |
||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
|
←★前へ | ●全バックナンバー● | 次へ★→ |