BIG ME club | 内藤景代が毎日更新する |
内藤景代 記 |
2002年9月7日(土) ●「無」から「有」が生まれる秘密 ●「畑のキャビア」とんぶり「何もない…どころか、こんな、おいしいものが、ここには、ある」作家・開高健の命名 ●市販の実物写真●ホウキグサ(箒草 ほうきぐさ)の実 ●掃除用具の草箒(くさぼうき) |
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東北の田舎(いなか)の村へ、小説家の故・開高 健(かいこうけん)が、行ったときに、「ここには、何もないので…」と、出されたのが、「ホウキグサ(ほうき草 = 帚木=ははきぎ)」の実(み)を調理したものだったそうです。 ↑●トンブリ。 ホウキグサの実。 ●世界中を釣りして寄稿した本…『オ−パ!』などの作者で、 美食家(グルメ)でもあった開高 健は、 その「トンブリ」とよばれるホウキグサの実を食べて、 世界の3大珍味のひとつとして有名な 「キャビア」とプリプリした「食感(しょくかん)」が 「同じ」だと、感じました。 「うまい!」 ●「何もない…どころか、こんな、おいしいものが、ここには、あるじゃないですか」 と彼は、――開高 健のエッセイを読むと――村のひとに、言ったそうです。 ●――ところが、村の人は、「これは――掃除用具の――草箒(くさぼうき)を作る草の実で、お客様に出すような料理ではない」と、とても恥ずかしそうに、答えたそうです。 自分たちが、ふだんの食事に出すもので、ひとさまにお出しするようなものではない… ●「こんな、美味しい(おいしい)ものを…… 自分たちだけで、隠しておくのは、もったいない! ぜひ、これを、この土地の特産品として、売り出しなさい! 名前は、【畑のキャビア】が、いい」 ●元・洋酒のサントリ−の宣伝部にいた開高 健は、キャッチコピ−の名手でもあり、宣伝マンでもあったので、いい「アイディア」を提供したようです。 何も「ない」と思っていたところ(畑)から、「そこにしか、ない」特産品が生まれる… 「無」から「有」が生まれる秘密……の一端が、ここにもあります。 ……今では、下記↓のように、東京でも、安く手軽に手にはいるようになりました。 ※→「無」から「有」が生まれる秘密については、『聖なるチカラと形・ヤントラ』を。 ●キャビアは、チョウザメ(蝶鮫)の卵を「塩漬け」にした食品で、「灰色の大粒のもの」が「本物」で、とても高価な珍味です。 キャビアは、イランやカスピ海沿岸などの名産品です。 チョウザメは、19世紀までは、カスピ海、黒海、バルト海、そして、大西洋、太平洋、に注ぐ多くの川にいたそうです。北海道の川にも、むかしは生息していたといいます。 ●世界3大珍味――とは、キャビア、ファオグラ、トリュフです。 ファオグラは、ガチョウを太らせて肥大させた肝臓。 トリュフは、キノコ。3〜10cmの塊状で、地下に育ち、地上では見つからないので、ブタ(豚)の嗅覚を利用して、ブタに探させるので、有名です。西洋松露。 ファオグラやトリュフは、高級フランス料理で、珍味として使います。 ※ チョコレ−トのトリュフは、このキノコの形を、「見立て」たものです。 ●ふつう、リ−ズナブルなお値段で、キャビアとして日本で売っている「小粒で、黒い卵」は、チョウザメではないそうです。 ――わたしは、長いあいだ、「小粒で、黒い卵」のキャビアしか知らなかったので、黒い粒がキャビアだと思っていました。 ●ところが、ソ連や地中海に近いレバノンのベイル−トなどで、灰色の大粒の「本物」を食べ、プチプチした固いばかりではない、柔らかさもある微妙な歯ごたえを感じ、やっぱり、美味しいな〜と思いました。 カナッペ(3cmくらいのクラッカ−に、オ−プンサンド風にいろいろの具をせた、おつまみ)に、小さなスプ−ンすりきり一杯ぐらいのっていただけでしたが…… ●トンブリです↑ 一粒が、2mmくらいです。 すこし黄色っぽい、小さな新芽(しんめ) が包みこまれています。 ●トンブリ→は、中国の漢方の辞典 「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」に 「地膚子(じふし)」としてのっている漢方薬でもあります。 ●トンブリは、日本でも,古くから,強壮強精剤や不老長寿の薬として使われてきたそうです。 利尿作用があり、泌尿器系の治療や腎炎の予防になり、目の疲れを癒し、肝臓の炎症に効果があるともいわれています。 ●色からいっても、食感からいっても、「灰色の大粒キャビア」と「黒い小粒のキャビア」の中間のような「トンブリ」。↑ この畑にとれるホウキグサの実(トンブリ)を、海や川のサメ(チョウザメ)の卵に、「見立て」た、開高 健のイメ−ジのチカラは、すごいな〜と思います。さすが、文学者。 ●井伏鱒二(いぶせますじ)に、開高 健が 「書けない… 書くことが、ない…」と 悩みを相談したら、 「あいうえお(いろは?)でもいいから、毎日、書きなさい」と いわれたという話がありますが、そんな話は、まるでウソのように、イメ−ジ豊かな「見立て」です… ●世界3大珍味↑――別名を贅沢品(ぜいたくひん)――は、食べ過ぎると(わたし達・庶民には、無縁でしょうが…)、成人病(せいじんびょう)になりやすいですが、「畑のキャビア」のトンブリの方は、漢方薬にもなるくらいで、食べるほど、体にもとてもいいようです。 わたしも大好きで、よく食べます。 血液がサラサラになる手伝いをするように感じます。 ●――「そこで、気になるお値段は?」 ↑この「真空パック」入りの「トンブリ」で、 100グラムで¥100〜¥200です。 わたしの買う、ス−パ−では、¥100です。 ●19cm×14cmくらいの「真空パック」のトンブリは、 アカザ科のホウキグサの実ですから、 「野菜売り場」に売っています。 でも、若いアルバイト店員さんは、 トンブリの存在も名前も、知らないようです。 ●秋田県の名産として、全国に出荷しているようです。 このパック→は「秋田県比内町特産」の 「畑のキャビア」、「とんぶり」とかいてあります。 裏に調理法や成分がのっています。 和え物(あえもの)や酢の物が一般的です。 ●キュウリやミョウガを千切りにしたものと、トンブリを、酢醤油(すじょうゆ=酢としょう油をまぜたもの。好みで三杯酢など)であえて、食べると、さっぱりして、夏のそうめん(素麺)にも、よくあいました。 もちろん、酒のつまみにも、とてもあいます。 細いちくわ(竹輪)を薄く切り、トンブリと、からし醤油(カラシとしょう油をまぜたもの)であえたものを、つまみに出すお店がありましたが、おなかにたまる、おつまみでした。 ●きょうは、「食べ物」モ−ドの日でした。 「目のご馳走(ごちそう)」として、観賞用にも人気のある、これから、赤く紅葉する「帚木=ホウキグサ」の、季節による「変化」の綺麗な写真は、また明日、お見せします。 |
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