2003年7月26日(土) お寺のガラスケ−ス内の「即身仏、すなわちミイラ」を拝観した時、 庭に咲きこぼれていた、オレンジ色のノウゼンカズラ(凌霄花)。 真夏の東北旅行の思い出。 冷害になりそうな今年、 五穀断ちしてミイラ(木乃伊)になったノンノ様、 お上人(しょうにん)の願いを思う。 即身成仏(そくしんじょうぶつ)とは |
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蒸し暑い日もあるので、「冷夏」とは感じにくいですが、太陽光が少ない夏なので、「冷害」の影響が、お米や野菜、果物などに出はじめているようです。 今、オレンジ色の「ノウゼンカズラ(凌霄花)」が、あちこちに咲いています。 以前、暑い夏に、燃えるような、このノウゼンカズラ(凌霄花)をはじめてみたのは、東北のお寺で、「ミイラ(即身仏 そくしんぶつ)」を拝観した時でした。だから、ノウゼンカズラ(凌霄花)をみると、強烈なオレンジと抜けるように高い青い空、そしてほの暗いガラスの中の「干からびた焦げ茶色の人間のミイラ」を同時に思い出してしまいます。 ●ノウゼンカズラ(凌霄花)↑ ●ノウゼンカズラ(凌霄花)をみるたびに、毎回思い出すほど、 暑い夏の東北旅行のお寺の入口に、 あふれるように咲いている、この花のイメ−ジは強烈でした。 自分から、五穀(ごこく)を断ち、 ウルシ(漆)を毎日少量づつ飲む、過酷な毎日。 ……そして、即身仏の腐らないミイラになっていく ……「強烈な意志」。 その「燃えるような意志」を、強烈なオレンジ色の ノウゼンカズラ(凌霄花)はあらわしているように感じました。 五穀とは「米、麦、粟・アワ、黍・キビ、または稗・ヒエ、豆」 といういわゆる「主食」になる穀物です。 ●ノウゼンカズラ(凌霄花) ●「お寺では、ミイラといってはいけない」と、 案内してくれた、タクシ−運転手さんが、注意してくれました。 「ミイラというと、お寺さんは、ちゃんとみせてくれませんよ」 観光案内やパンフレットには、「ミイラ(木乃伊)」とかいてありますが…… ●自分たち、土地のものは 「のんの様、ののさま、お上人(しょうにん)様」とよんで、 拝んできた、と運転手さんはいいます。 「のんの様、ののさま」とは、「ほとけ様」の呼び方です。 わたしの幼い頃も、仏壇の 「のんの様に毎朝、お水をかえる」といっていました。 ●「のんの様、ののさま、お上人様」は、 生きたまま「成仏(じょうぶつ)」して「ほとけ様」になったかた ……という「即身成仏(そくしんじょうぶつ) すなわちミイラ(即身仏=木乃伊)」という解釈の信仰です。 ●なぜ、自分からの意志で 「人間の干物(ひもの)、ミイラ」になっていくのか? 自分が死んでも、 ミイラ(即身仏)という「物(ぶつ)」として、 「仏(ぶつ)」が残る。 その「仏(ぶつ)」の願(がん ねがい)は、 ミイラ(木乃伊)」という「物(ぶつ)」の中にこもり、 死んでもパワ−(チカラ)を持ちつづける ……という「呪術的な思考法」なのではないでしょうか。 ●東北には、密教的なミイラ(即身仏)信仰のようなものがあり、 各地にミイラ(木乃伊)が残されています。 その中でも、あのお寺のミイラ(即身仏)の保存状態は、 良質で保存もよく、ある大学の研究でも、 折り紙つきの結果だそうです。 ● しかし、ミイラ(即身仏)は、 お寺の本堂の左手にあり、堂内は開け放たれて、 ク−ラ−もはいっていません。 ミイラ(即身仏)は、特別に冷蔵庫に入っているわけではなく、 当たりまえに、「仏像」と同じに、 ガラスケ−ス内に安置されているだけです。 青い目のシャム猫が本堂にいました。 ミイラ(即身仏)を、ネズミから守っているのでしょうか。 ●ミイラ(即身仏)になった 「のんの様、ののさま、お上人様」の生前を知っていたお年寄りも 近所にいる、という話でした。 数十年前の、昭和の話です。 真夏でも、腐らない。 その不思議は、過酷なプロセスをミイラ(即身仏)になったお上人様が、 自分に課したからだそうです。 ●「五穀断ち」で、体を浄化していき、 だんだんに食を細くして、 ウルシ(漆)を飲む (毒ですよ。肌に触れても、かぶれるものを、飲む……腐らないために)。 最後は、みずから石の井戸に入り、 断食して禅定(ぜんじょう)にはいる。 その井戸を拝見しましたが、 水はない、枯れ井戸で、乾いていました。 そこにふたをして、竹の筒を通して、 呼吸すると、鈴の音がする。 鈴の音 がしなくなったときが、いのちが消えたとき…… ●壮絶。 なぜ、それほどまでにして、ミイラ(即身仏)になったのか? 当時の東北は冷害や飢饉(ききん)などが続き、 親が娘を売らざるをえない状況など、 不幸が多く、そのひとたちを救う 「衆生済度(しゅじょうさいど)」の願いからだとききました。 その「のんの様の願(がん)の強さ」が、 ミイラ(即身仏)をつくったのでしょう。 ノウゼンカズラ(凌霄花)の花に似た、 燃える「衆生済度の願い」。 ●飢饉の炊き出し用の、ミニ・プ−ルのように大きな鉄ナベも、 東北でみました。 冷夏による冷害をうけやすかった「東北の密教」は、 出羽三山(でわさんざん)だけでなく、 「熱い願い」をもって、各地に根をはっていたように思いました。 ●さて、ノウゼンカズラ(凌霄花)は、 幹から「気根(きこん)」を出して、 樹木などに、はいのぼり、 つる(蔓)をのばすそうです。 6月17日のテイカカズラ(定家葛)と同じで、 「はいのぼり型の、つる草」です。 この5弁の花を干すと、 利尿薬になり、むくみ(浮腫)に効くので、もとは、 薬草として栽培されていたといいます。 ●7月の寒い夏の東京でみると、 ノウゼンカズラ(凌霄花)の花は、それほどパワ−を感じません。 けれども、だからこそ、冷夏の東北を連想し、 あのミイラ(即身仏)のお寺の、 燃えるように強烈な朱紅の ノウゼンカズラ(凌霄花)の花を思い出すのかもしれません。 ※→密教や、即身成仏(そくしんじょうぶつ)、禅定については: 『ヨガと冥想』 p104 「四段:絶対の現れとしての、私。対立から統合へ●即身成仏」
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